- ・算数のテストの点がいつも低い
- ・算数になると急にやる気をなくす
- ・家庭で教えたいけど、昔と違うから教え方が分からない
「うちの子、算数が分かっていないみたいなんだけど…」と悩んでいる保護者はとても多いです。
私も現役の小学校教師として、多くの「算数が苦手」という悩みに寄り添ってきました。そして、2人の子どもを持つ親としても、その気持ちは痛いほどよく分かります。
これまで15年以上、小学校で指導する中で気づいたのは、「算数が苦手」と思われている子どもたちの多くが、「算数が日常生活とかけ離れている」ために、つまずいていることが多いということ。
適切な声かけと家庭での関わり方を少し変えるだけで、お子さんの算数への苦手意識は驚くほど軽減し、「わかった!」という喜びを味わえるようになります。
本記事では、現役教師の視点から「算数が苦手な子どもが伸びる家庭での声かけ&勉強法」を徹底解説します。 「どんな声をかければやる気が出るの?」「具体的にどんな勉強法が効果的?」といった疑問に、実践的なアドバイスを交えてお答えしますよ。
この記事を読めば、お子さんが算数を「楽しい!」と思えるようになるヒントがきっと見つかるはず。ぜひ最後までご覧ください!
算数が苦手な子の特徴とは

算数が苦手な子にはいくつか共通する特徴があります。その中でも特に影響が大きいのが以下の3つです。
- ・基礎的な計算力の不足
- ・算数に対する自信の欠如
- ・算数概念の定着不足
これらの特徴が重なることで、算数に対する苦手意識が強まり、学習の遅れにつながってしまいます。
基礎的な計算力の不足
算数が苦手な子の特徴の一つとして、基礎的な計算に時間がかかったり、ミスが多かったりすることが挙げられます。
算数の多くの問題は、足し算、引き算、かけ算、割り算といった基本的な計算を土台として成り立っています。もし、これらの基礎が不安定だと、その後の応用問題に取り組む際に大きな壁となってしまい、内容を理解する前に計算でつまずいてしまうことが多いのです。
また、計算問題を見た瞬間に「難しい」と感じてしまい、取り組む前から抵抗感を示すこともあります。
以上のように、算数が苦手な子には、基礎的な計算力の弱さが根底にある場合が多いと言えるでしょう。
算数に対する自信の欠如
算数が苦手な子の大きな特徴として、算数に対して自信を持てていないことが挙げられます。
過去の失敗経験や、問題を解けないことへの周りの反応などから、「自分は算数ができない」というネガティブな思い込みを抱えてしまうことがあります。この自信の欠如は、新しい問題に挑戦する意欲を低下させたり、少し難しいと感じただけで諦めてしまったりする原因となります。
算数の授業中に積極的に発言することをためらったり、問題に取り組む前から「どうせ分からない」と口にしたりする様子が見られることも。また、テストで間違えた問題があると、必要以上に落ち込んでしまい、「やっぱり僕はダメだ」と感じてしまうことも少なくありません。
つまり、算数が苦手な子は、能力的な問題だけでなく、心理的な面でも自信を失っていることが往々にして見られます。
算数概念の定着不足
算数が苦手な子には、算数の土台となる基本的な算数概念がしっかりと身についていないことも多いです。
算数には、「数の概念」「図形の性質」「割合」「分数」など、さまざまな重要な概念があります。これらの概念をしっかり理解せずに、ただ公式を暗記するだけでは応用が効かず、少し問題の形が変わると解けなくなってしまいます。特に、文章題や応用問題になると、「公式に当てはめれば解けるはずなのに、どうしていいかわからない」という状態に陥ります。
以前、6年生の「速さ」の学習でこんなことがありました。
「速さ=道のり÷時間」といった速さの公式を覚え、問題を解けるようになった子。
その子が「80mを16秒で走ったときの速さを求めなさい」という問題には対応できても、「時速4kmで歩く人が30分で歩く距離を求めなさい」と問われたときに、何の違和感も感じず120kmと書いてテストを提出した。
これは、単に公式を暗記しただけで、「速さとは何か」という算数概念がしっかり理解できていないためです。
このように、算数が苦手な子には、算数の土台となる基本的な概念の定着不足が見られることが多いです。
「算数が苦手」を克服するためにつけるべき力

そこで、算数が苦手な子どもにまず高めてもらいたい力が、「計算力」「思考力」「算数感覚」の3つの算数の土台です。この土台をしっかり育てることで、苦手意識は確実に減り、自信をもって学習できるようになります。
基礎的な計算力
算数克服のために最初につけるべき力は、正確でスムーズな基礎的な計算力です。
算数の多くの問題は、足し算、引き算、かけ算、割り算という基本的な計算を土台としています。もし、この基礎が不安定だと、応用問題に取り組む以前に計算でつまずき、算数全体が難しく感じてしまいます。正確な計算力は、問題を解くためのスピードと自信につながり、算数への苦手意識を減らす第一歩となるのです。
- ・繰り上がりや繰り下がりのある足し算、九九をしっかり覚える
- ・分数の足し引き、小数のかけ算などを、時間を意識しながら正確に解く練習をする
- ・基礎計算ドリルを活用したり、日常生活の中で簡単な計算を取り入れたりする
これらの基礎がしっかりしていれば、複雑な問題も「まずは計算してみよう」という気持ちで取り組めるようになります。
したがって、算数克服の第一歩は、正確な基礎計算力を身につけることです。
算数的思考力
算数克服のためにつけるべき二つ目の力は、問題の本質を見抜く算数的思考力です。
算数的思考力とは、問題文を読んで何が問われているのかを理解し、必要な情報を選び出し、どの知識や解法を使えば答えにたどり着けるかを論理的に考える力です。この力が不足していると、公式を暗記するだけの受け身な学習になりがちで、少し形が変わった問題に対応できなくなってしまいます。算数的思考力を養うことで、表面的な情報に惑わされず、筋道を立てて問題を解決することができるようになります。
算数的思考力が高いと…
・「〇〇が〇個あって、△△が〇個増えました。全部でいくつになりますか?」という問題であれば、「増えた」という言葉から足し算を使うと考える
・図形の問題であれば、「この図形はどんな形を組み合わせているかな?」「この角度はどうやって求められるかな?」と考える
このように、問題の状況を整理し、図や線で表したり、簡単な例で試したりする習慣をつけることが、算数的思考力を養う上で重要です。
算数克服のためには、単に計算方法を覚えるだけでなく、なぜそうなるのかを考え、自分で答えを見つけ出す算数的思考力を育てることが不可欠です。
算数感覚
算数克服のためにつけるべき三つ目の力は、日常生活と結びついた算数感覚です。
算数感覚とは、数字や量、形などが、私たちの身の回りの世界とどのように関係しているかを直感的に理解する力です。この感覚が養われていないと、算数の問題が現実離れした抽象的なものに感じられ、学習意欲が低下する原因に。日常生活の中で算数的な視点を持つことで、算数の面白さや役に立つ場面を実感でき、主体的な学習につながります。
- ・お菓子を分けるときに「均等に分けるってどういうことかな?」「一人あたりいくつになるかな?」と考える
- ・買い物に行ったときに「この値段でこれはお得かな?」「あといくらで目標金額になるかな?」と考える
- ・料理をするときに「レシピの分量を半分にするにはどうすればいいかな?」と考える
このように、日常生活の中の様々な場面で数字や量、形に意識を向け、実際に手を動かしてみることが、算数感覚を磨く上で大切です。
算数克服のためには、机の上だけの勉強ではなく、身の回りの出来事と算数を結びつける算数感覚を養うことが、算数への興味関心を高め、理解を深めるための重要な鍵となります。
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算数の苦手克服のために保護者ができる5つのこと

算数の苦手克服のために保護者ができることを具体的に紹介します。結論から言うと以下の5つです。
- 毎日5分!「計算ルーティン」で基礎力を底上げ
- 算数嫌いを変える魔法の声かけ
- 日常生活で算数センスを育てる
- つまずきを克服するビジュアル学習
- 親子で楽しむ学習アプリ・動画
毎日5分!「計算ルーティン」で基礎力を底上げする方法
毎日たった5分の短い計算練習を習慣化すると、子どもは計算を“考えずにこなせる”レベルまで自動化できます。短時間でも継続することで脳内の計算回路が繰り返し刺激され、文章題や図形問題で本来使うべき「考える力」に余裕を残せるからです。
計算力アップのためのアクションプラン
・100ます計算を1日1シート(タイムも記録)
・九九カードをシャッフルして1分間で何枚言えるかチャレンジ
・小数・分数の足し引き10問をホワイトボードに書き、親子競争
3週間ほど続けると「前より速くなった!」と自分で成長を実感でき、計算への抵抗感が大きく下がります。結局のところ、基礎計算は“毎日少しずつ・確実に”が最短ルートです。

我が家の小学生の娘は毎日、風呂上がりの髪を乾かす時間を計算時間にあてて練習しています!
“できた”を引き出す!算数嫌いを変える魔法の声かけフレーズ
算数に前向きになれる子は、保護者のポジティブな声かけで「自分にもできる」という信念を育ててもらっています。人は成功体験を他者に評価されるとドーパミンが分泌され、再挑戦しやすくなるためです。
自信を高める具体的声かけプラン
・「計算ミスは1か所だけだったね。次は0にできそう!」
・「考え方が合ってるよ。あと少しだね、一緒に確かめよう!」
・「さっきは3分、今日は2分で解けたね。すごい成長!」
結果そのものより過程を認める言葉を選ぶと、子どもは安心して新しい問題に挑戦します。声かけは“評価”ではなく“応援”と心得ると、算数嫌いは確実に薄まります。
買い物・料理が教材に!日常生活で算数センスを育てるコツ
日常の場面に算数を組み込むと、教科書の数字が「自分ごと」に置き換わり理解が加速します。脳は実際の体験にひもづいた情報の方を長期記憶に残しやすいからです。
日常生活を算数学習に変える具体的プラン
・買い物中に「1000円以内で好きなお菓子を3種類選んでみて」
・料理で「レシピの2倍量を作るには調味料を何グラムにする?」
・カレンダーを見ながら「あと何日で遠足? 1週間は何日?」
「数字=生活を便利にする道具」と気づかせることで算数への親近感が芽生え、机上の学習にも意欲的になります。
図と具体物で見える化!つまずきを克服するビジュアル学習術
抽象的な数や図形を、自分の目で“形”として確認できると理解のハードルが一気に下がります。視覚情報は言語情報より処理が速く、誤解が生まれにくいからです。
算数感覚を高めるビジュアル学習プラン
・レゴやブロック:体積・倍数・分数のモデルに最適
・おはじき・ビーズ:割合や集合のイメージづくり
・線分図・テープ図:文章題を図式化して関係整理
「3分の1ってこのくらいなんだ!」という体感は、公式暗記より強力です。“見える化→操作→言語化”の順で学ぶと、つまずきは驚くほど減ります。
親子で楽しむ学習アプリ・動画の選び方と効果的な使い方
デジタル教材は「ゲーム感覚」と「即時フィードバック」で学習効率を高めます。ただし内容と使い方を選ばないとかえって集中を削ぐので、目的に合うものを厳選しましょう。
学習アプリの効果的な使い方
・難易度が段階的で、達成バッジなど成長が可視化される
・間違えた理由を解説してくれる(やりっぱなし防止)
・プレイ時間を設定でき、やり過ぎを防げる
活用するときは「10~15分+親子で振り返り」を1区切りにして取り組むのが理想です。デジタルは“量”より“質”。遊ぶ→気づきを共有→翌日の学習に活かす、この循環でアプリは最高の先生に変わります。
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算数を生活に結びつけられる具体的場面

日常生活には子どもの算数感覚を高めるチャンスがたくさん。無意識に過ごすとただの日常ですが、保護者が少し意識すれば毎日は算数感覚を高める宝庫になります。
1 料理

料理は量感覚と割合理解を高めるのに最高の場面です。
例えば、クッキーを作るときには「◯個分の分量:小麦粉200 g、バター100 g、砂糖80 g」とレシピには書いてあります。ここで、「◯個作るならどれだけの材料がいるかな?」と問うだけで、子どもは“倍にしたら各材料はいくつ?”“砂糖はバターの何倍?”と自然に比や比例を意識します。
さらに「4人分のレシピを6人分に増やすには?」と人数に合わせて材料を調整させると、掛け算・分数・小数の計算練習にも早変わりします。
2 買い物

買い物は計算力と見積もり力を高めるのに最高の場面です。「1本98円のジュースを3本買うと合計はいくらか」「1,000円札で払うとおつりはいくらか」と、スーパーマーケットは即席の暗算ドリルそのもの。
特売コーナーで「100 g当たり何円か比べてみよう」と単価を計算させれば、割合の学習にも直結。財布に入れた予算内で好きなおやつを選ばせる“買い物ゲーム”は、足し算・引き算だけでなくお金の価値を実感させる絶好の機会です。
3 時計

時計は時間感覚と単位変換力を高めるのに最高の場面です。「夕飯まであと45分」と伝えたら「今が17時15分ならご飯は何時?」と時刻を逆算させる、テレビ番組の開始まで「あと何秒?」と分→秒の変換をさせるなど、日常会話がそのまま時間計算のトレーニングになります。
「30分後は長い針がどこ?」とアナログ時計を使えば、円の4分割=直角=90°という図形の感覚にもつながります。
4 車や電車などの乗り物

車や電車などの乗り物は速さの概念を高めるのに最高の場面です。例えば、時速60 kmの車で20 km先のショッピングモールに行くなら「到着まで何分?」と速さ=道のり÷時間を逆算。電車移動では時刻表を見ながら「乗り換え時間は何分しかない?」と差を計算させると、時間の引き算にも強くなります。
また走行中にオドメーターを見て「5 km走るのに何分かかった?」と実測させると、速さ・距離・時間の三つ巴を体感できます。
5 スポーツ

スポーツはデータ分析力と空間認識を高めるのに最高の場面です。野球観戦で「打率3割は10回打席に立つと何回ヒット?」と割合を使う、サッカーで「前半に2点、後半に1点入れたら合計何点差?」と合計・差を計算するなど、スコアがそのまま計算問題に。
バスケットボールの3ポイントと2ポイントを比較して「得点効率は?」と平均・比を考えさせると統計の入口にもなります。さらにコートの幅・距離を図で示すと、面積・距離感覚まで養えます。
【まとめ】家庭での一工夫で算数苦手を得意に変えよう!

算数が伸びるかどうかは、才能よりも“日々のかかわり方”で決まります。
- ・基礎的計算力は、毎日5分の計算ルーティンでコツコツ強化する
- ・算数的思考力は、図や式を書き出して「どう考えたか」を親子で共有する
- ・算数感覚は、料理・買い物・時計・乗り物・スポーツなど生活場面で数を体感する
そこに「前より速くなったね」「考え方は合ってるよ」といったポジティブな声かけを重ねれば、子どもは自信をもって挑戦できるようになります。
今日からできる小さな工夫を積み重ね、わが子の「算数って面白い!」という笑顔を引き出しましょう。家庭が変われば、算数苦手は必ず“得意”に変わります。
≫【教師は言わない】小学生の成績を上げるために保護者ができることを現役教師が解説!